桜田くんの第一ボタン
泣きそうになるわたしを見つめる川崎くんはわかっていたよ、とでも言うように諦め混じりの笑みを浮かべた。
その表情を見て、わたしは余計に顔をくしゃりと歪ませる。
くっ、と喉の奥が鳴る。
「春だから、思い出すんだと思っていたの。桜がなくなればきっとって!」
でも、だめだった。
忘れられない。
君の熱も、優しさも、笑顔も。
なにも忘れたくない。
……それがひどく貪欲で、川崎くんに対して最低なことだったとわかっていても。
桜がなくても、そんなことわたしの〝好き〟には関係ないの。
だって、わたしの想いは桜の花のように散ることはないんだから。
内ポケットにある第一ボタンがなによりの現れなんだ。