桜田くんの第一ボタン




卒業式のあの日、



『清水……?』



わたしたちは、



『ボタンを下さい』



通じ合えたと、そう────



『またね』



思っていたのに。








──ああ、やっぱり桜はだめ。

大好きだけど、桜が咲くと、わたしを簡単に過去へと連れ去ってしまう。



目をつむっているだけで頭の中が桜田くんでいっぱいになって……だけど全てが記憶の向こう。






「咲良? ごめん、おまたせ」



ゆるり、と緩慢な仕草で目を開けた。



そこには明るい茶髪。

不思議そうな表情をした──川崎くん。



わたしは息を吐きながら、ふわりと彼に微笑みを向ける。



桜は太陽の光を受けて、眩しいほど綺麗に咲いていた。






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