スカイ×ブルー




パパとママが死んだ時、


『ち、ちぃ兄・・・蝶愛を一人にしないでぇ』


『しないよ。ずっと側に居る』



兄、千隼は優しくそう言ってくれた。


その言葉・・・

声・・・

背中に安心感を抱いた。



私が六年生になる時、ちぃ兄は言った。



『俺、“豹----”に入るんだ』


『ひょう----? 何それー?』


『秘密ー』



今でもあの曖昧な言葉の意味が分からない。昔の記憶が薄れている。


そして中1。


“龍紳”の総長に誘われ暴走族の世界に足を踏み入れた。


そして沢山の出会い・・・

沢山の別れをした。



でもあたしは実力を伸ばし総長になった。

そして全国トップに立った。



そして・・・中三の秋。


負のインターホンが鳴り、画面にはゆうさんの頭が映し出された。
いつもは画面にドアップの笑顔を映してくるんだけどなぁ。



変に思いながらも扉を開ける。


『どうぞ』

家に入るように促した。
けれど、ゆうさんは俯きながら動かない。


床に雫が一滴、一滴落ちて行った。

涙だってすぐに理解した。
嫌な予感が過る。


「どう、したの・・・?」

自分の声が震える。
こんなに弱くなっているゆうさんを見るのは初めて・・・。


パパとママが死んだ時もあたし達兄妹に“大丈夫、大丈夫、俺がいる"って。

けれどあたし達兄妹は知っている。


葬式の後、パパとママの棺の前で座り込んで泣いているゆうさんを・・・


あたし達の前で強がるゆうさんが今、あたしの前で泣いている。










『千隼が死んだ』



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