スカイ×ブルー


その後は何事もなく穏やか日々を送った。 学校行っては倉庫行っての繰り返し。

バイクが襲われた話も誰もしなかった。


あたしは輝のあの言葉にも触れなかったし、輝もあたしの事には触れなかった。



「ちぃ、前の学校に彼氏いなかったの?」


テレビの向かいのソファに輝と座り、置いてあった少年雑誌を読んでいたあたしに唐突にトーマが聞いてきた。



「えっ? えっ?」


トーマにとってはささいな一言だったらしく、きょとん顔であたしを見ていた。

あたしを見ていたのはトーマだけじゃなくて、後ろ以外の全方向から視線を感じた。


「蝶愛は俺くらい強くてかっこいい男が好きなんだよ。 そんな男は早々いないから彼氏いなかったよな?」

いつの間にあたしのタイプそれになってたの? 隼人。


「蝶愛ちゃん前の学校でもモテたんだろうね」

葵も乗らないでよ。



「いなかったよ」

再び雑誌に目を通し始めた。

龍神の総長だということがバレないようにあたしは当時副総長だった京太の彼女と言う事だけを龍神との関係性にしていた。


中学の時は男子からメアドを聞かれる事があったけれど、龍神に入ってからは一切なくなった。

それのために入ったっていうのもあったけれど。


「やっぱりな!」

後ろから嫌な気配を感じ、ソファから滑り降りて雑誌を読みながら床に座り込んだ。


「おいっ! 照れんなよ!」

振り向くとソファの背の後ろから前のめりになりながら、両手をクロスさせている隼人。


「変態隼人」


一言呆れ声でトーマは呟く。


「邪魔」

あたしの隣に座っていた輝がバイク雑誌で隼人を叩いた。



こんなくだらなくて何もない日常が続けばいいのに、と強く願った。



< 194 / 201 >

この作品をシェア

pagetop