KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―



「えっと……」


「lily の方がいいだろう?」と躊躇う事なく私に言ってくれた春斗さんの言葉を嬉しく思う。

いつも勝手に見た目のイメージでrose crownの方を勧められちゃうから。

実際に、彼の指示でソファーに並べらた服は、ほとんどがlily crownだけど、後ろでソファーに並べきれなかった服を持っている店員さんは、「こっちの方ですよね?」とでも言うかの様に、rose crownの服を私に見えるように掲げている。

まるで、彼のチョイスが間違いだと確信しているかのような態度に思わず苦笑してしまう。



「そうですね。lilyは好きなんですけど……」


……似合わないんですよね。これが。




「なら、問題ないだろ?」

言い淀む私の言葉に、彼はまるで「何を悩んでいるのかわからない」とでも言うように、不思議そうな顔をした。




『好きなら問題ない』。


そう割り切ってしまえれば楽なんだろうけど、何度似合わないと言われてきているという事実が私に重く圧し掛かり、どうしても気持ちにモヤモヤとしたものを残してしまう。

どうしても、人からどう見られているのかというのが気になってしょうがないんだ。




「……でも、私、こういう見た目だから、どうしてもlilyの服が似合わなくて」

lily crownを選べない理由を曖昧にしておくのに限界を感じて、ゴクリッと唾を飲んでから、思っている事を伝えた。

私の容姿を見れば一目瞭然で、隠しようもない事実なのに、それを言葉にして伝える事には、思いの他、勇気が必要だった。
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