KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―



「そんな訳ないだろ?」

気まずい気持ちを愛想笑いで誤魔化した私に対して、彼は驚いたように目を僅かに開いた。




……何処からどう見ても、そんな事あるでしょ。

彼の目には、私の容姿がどんな風に映っているというのだろうか?


さっき、眼鏡もせずに普通に車を運転してたけど、もしかして、物凄く目が悪いとか?

って、さすがにそれはないか。



「そんな訳ありますよ」

「あり得ない」


気持ちが沈んでいくのを感じながら、溜息混じりに答えた私の言葉を、すぐに彼が否定してくる。

その断言するような強い口調に、今度は私の方が驚いた。



lily crownの服が好きだと人に話した事は今までに何回かあった。

その中で、「似合いますよ」と言ってくれた人はいない訳ではないけど、その口調や表情は、いつも見るからにお世辞で、こんな風に『当たり前』みたいに断言してくれる事はなかった。

だから、彼がそこまでしっかりと否定してくれた事は私にとって心底意外だったんだ。



「そういってくれるのは嬉しいけど……」と口を開こうとした瞬間、彼がフンッと偉そうに、胸を張って笑った。


そして、王者のような態度で、私を見下ろして宣う。



「俺が選んだものが似合わないはずがない」

……と。



一体、貴方のその根拠のない自信はどこから来るんですか?

その自信、10分の1位で良いから、分けて欲しい。
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