KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―



「嘘みたい……」


着替え終えて鏡の前に立った私は、思わず目を見開いた。

それは、本当にシンデレラのように魔法を掛けられたような気分だった。


あれだけ絶対に合わないと思っていた服達。



あまりのミスマッチさに失笑すること間違いなしだと思ってたのに……



どうしよう。

意外と悪くないかも。




「どうだ?やっぱり俺の見立てに間違いないだろ?」


嬉しさと驚きに、鏡の前で、クルッと回り、いろんな角度から服装をチェックしている私に、春斗さんはニヤリッと笑った。



「悪くないかも」

あれだけごねた後に、素直に彼の意見を受け入れるのは何だか気恥しくて、ちょっとだけ捻くれた肯定の仕方をする。

彼は、そんな私に呟くように「素直じゃないな」と呟いて、満足そうに笑った。




もちろん、服を着替えた所で、私の容姿が変わるはずもなく、私の持っている『大人っぽさ』は相変わらずだ。

でも、彼が選んでくれた服は、その『大人っぽさ』と喧嘩する事なく、そこに可愛らしさをプラスしてくれている。

何だか、自分の持っていた、毒々しさというか、ツンツンとした気の強そうな感じみたいなものを、少しだけ柔らかくしてくれている感じ。

元々lily crownが似合う人のような、人形のような甘い可愛らしさは、もちろん私では出せないけど、それでも、可愛らしさからは無縁にならざるを得なかった私にとっては、大満足過ぎる結果だった。




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