KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―
「それじゃあ、ご納得頂けたようだし、それに決定って事でいいね」
「は、は……い?……いや、やっぱりちょっと待って!!」
彼の言葉にすんなり頷き掛けて、動きをピタッと止めた。
そういえば、彼に流された上に、服の似合う似合わないに気を取られててうっかり失念しかけてたけど……
自分の試着している服を軽くパタパタ叩くように触り、値札を探す。
lily crownは高い。
庶民の私からしたら、服1枚買うのに、それこそ清水の舞台から飛び降りる位の勇気がいる。
……いや、流石にそれは言い過ぎか。
でも、パンジージャンプ位の気合いは少なくとも必要だ。
それを、いくらお詫びと言われたからと言って赤の他人に買って貰うのはやっぱり……
「……何やってるんだ?」
やっと見つけた値札を見ようとした瞬間、それを持っていた手をガシッと捕まれ、動きを封じられる。
ニッコリと凄みのある笑みを浮かべた彼は、明らかに私の行動の意図を理解しているだろう。
「いや、あの、買える金額か確認をしようかと……」
何度も言うようだがlily crownの服は高い。
だから、買える金額じゃないこと位、値札を見るまでもなく明らかだ。
でも、買ってくれる気満々っぽい彼の申し出を断り切れなかった時に、1アイテムのみ買って貰い、後は自分で買うと言えるかどうかの検討したかった。
「自分で買うから大丈夫」と言っておいて、やっっぱり買えないとかいう気まず過ぎる展開は避けたいし。