KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―
「必要ないだろ?」
「いえ、必要です」
「いや、ないだろ。全て俺が出すんだし。そして、俺的には全く問題ない」
何の躊躇いもなく、あっさりと「問題ない」と言い切れるなんて、何て羨ましい。
まぁ、見るからにお金持ちのエリートっぽい彼と、平の雑誌編集者でしかない、自分のお財布事情を比べても意味がないんだけどね。
「いえ、流石にこれ全部出して貰うわけには……」
値札さえ確認させて貰えていない私は、自分で払うと宣言する勇気もなく、ただ遠慮の言葉を伝える事しか出来ない。
「これ、このまま着てくから、値札とっちゃって」
「はい、畏まりました」
って、ここでも私の発言無視ですか?
「いやだから!!」
ハサミを持って私に近寄ろうとする店員さんを制止しようとした手はあえなく春斗さんによって捕まれ封じ込められた。
値札を持つ手と、制止しようとした手。
両方捕まれた私は、抵抗することもできず値札を取られた。
なんだこの状態は。
私はいつの間に捕虜になったんだろう?
ニココニコ微笑んでる店員さんの顔は、この状態を見ても変わらない。
春斗さんはなんだか、私の反応を楽しんる感じだし。
これは、この状況を受け入れられない私の柔軟性の乏しさの問題なのだろうか?