KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―
「さて、ドレスアップも済んだことだし、次は……」
「次は?」
結局、服は買って貰った上に、元々私が着てた服はクリーニングに出してもらえ、後日自宅に郵送までしてもらえることになってしまった。
私としては、思わぬ厚待遇にオロオロと恐縮し通しだ。
なのにも関わらず、これ以上彼は何をしようと言うのだろうか?
不安9割のドキドキを感じつつ、自らもking crownの服に着替えた春斗さんに訊ねる。
その回答は聞かずに済むなら聞かないままでやり過ごしたいけど……
でも、きっと無理だろうな。
この短時間で痛感したけど、この人、暴君だし。
きっと、もう決めていることなら、私が何を言ったところで、この人はやる。
なら、腹をくくって話を聞いて、覚悟した方は利口というものだろう。
「そりゃあ、ドレスアップしたら、次は舞踏会に決まってるだろ?」
「ぶ、舞踏会!?」
いやいやいやいや!!
決まってないでしょ!!
ってか、舞踏会っていつの時代の何処の国の話だよって感じだし!!
少なくとも、私のスケジュール帳に、そんな優雅なイベントが書かれた事はないから!!
「じょ、冗談ですよね?」
「大真面目だ」
そこは敢えて冗談であって欲しいと言うか……。
「外も暗くなっきて、お腹も空いてきた事だし、メインディッシュと行こうか」
「いえ、私はもう前菜だけでお腹一杯状態なんで」
「君のその慎ましい態度も魅力的だけど、ここは素直に甘えておいてくれ」
「あの、別に慎ましいとかそういうんじゃなくて……」
「夜は意外と短いものだ。さぁ、行こうか」
「…………」
誰かお願いだから、彼に人の話を聞くというスキルを教えてやって下さい。
ってか、『素直に』っていうなら、お願いだから私をもう帰らせて!!
そんな私の心からの願いも空しく、私はその『舞踏会』とやらに連れて行かれるはめになったのだった。