由来と山岸君
大葉可奈子の想い

大葉side

いつからかな…

山岸君のこと好きになったの……。


小学4年生の運動会の練習中のこと。


「よーいどんっ」


掛け声と共に時間が動いた。


そして、目の前で山岸君の姿を見た。


速い男の子たちと走ったのに

大差を付けてゴールした。


すっすごい…。かっこいい………


可奈子は、憧れを抱いた。


「きゃー山岸君!さっきはとても
早かったねー。かっこよかったよ」


次々と女の子たちが山岸君の

周りに詰め寄る。


「いや、速くないよ。ごめんけど
そこどいて」

対応もかっこいい…。


「ごめんー」

女の子たちは、がっかりした顔で


石を蹴っていた。


その日を栄に、可奈子は山岸君の

走っている姿を見るようになった。


「私、山岸君に告白する」


学年で一番もててる女の子が言った。


「え?ホント?じゃぁ私だって」


4人の女の子たちが言った。


可奈子は、見守ることしか

できなかった。


あの子、可愛いし付き合うんだろな


山岸君と両想いなんて夢の又夢。



2日後………………


可奈子の前に、大勢の女子が集まっていた


「どうしたの?」

可奈子は中へ入る


「どうして…。うぅー…………」


そこには、2日前に山岸君に告白すると


言っていた女の子たちが泣いていた。


可奈子も、話に入った。


「何て言ったの?」


周りの女の子が告白した人達に聞いた。


「ずっと、山岸君のこと見てました。
付き合ってくださいって言ったの……
そしたらね、恋愛興味無いから無理
って言われた…。」


周りで聞いてる子たちが顔を見合わせた。


「何それ、ひどくないー?もっと優しく
言えるでしょー」


次々と言った。


「私の方がもっとひどかったの…」


告白した一人が言った。


「私は、良かったら付き合ってください
って言ったら無理の一言だったよ」


それを聞いた周りの子達の表情は


呆れた顔になった。


山岸くん振ったんだ………。


可奈子は、少しほっとした。


それから、小学生は片思いで

山岸君を見続けていた。



中学生になり、山岸君と同じクラス

になった。


可奈子は、とても嬉しくて

話すこともないのに毎日が楽しかった。


そんなある日……………


今日は雨降るなんて知らなかったぁ。


可奈子は、カバンを頭の上に乗せて


走って家へ帰っていた。


可奈子の家は学校から離れている。


可奈子の体力も底をついて


走るのをやめて歩き始めた。


『ん、これ。』


声がするの方に可奈子は顔を向けた。


『え…?』

そこには、山岸くんがいた。


『この傘使えよ。』


可奈子の心臓は一気に早くなる。

あの、山岸君が…。


『わ…私、平気だから。山岸君が
濡れちゃう 』

可奈子は、山岸君の気づかいが

嬉しかった。


『ほら、んじゃな。』


山岸君は、可奈子の肩に傘を掛けた。


『いやっ、ま……』


山岸君は、走って行ってしまった。



きゃーーー!うれしー!


可奈子は、傘を左右に回した。


これ、山岸君がさっきまで握ってた


やつだよね…。


可奈子は少しにやけた。


私のこと覚えてくれてたのかな…?


山岸君が欲しい…。


私のものに……。




次の日………


『山岸君これ、ありがとう。助かった』


可奈子は、綺麗に畳んだ傘を渡した。


『おぉう。』


山岸君は、傘を受け取り


『んじゃ。』


そして、帰りだした。


『ちょっと、待ってー、』


そして、可奈子は山岸君の肩を掴む。


『何?』


山岸君が振り替える。


『こ、これ…良かったら食べて』


そして、ナップサックから


リボンで綺麗にラッピングした


袋を取り出す。


可奈子は山岸君との距離を縮めるために


昨日から、クッキーとカップケーキを


何度も練習して5時間かけて作った。



『何それ。』


山岸君は、手に取らず眺める。


『えっと、クッキーとカップケーキ
だけど好きじゃないかな…?』


可奈子は、予定通り上目遣いで

問いかけ見つめる。


『あー俺甘い物好きじゃないから。』


山岸君は、即答した。


『そそっか……』


可奈子は、下を向いた。


予定では、受け取ってもらう

つもりだったのに…。


可奈子は、予定外のことに戸惑った。


『じゃ。』


そして、山岸君の姿は見えなくなった。


可奈子は拳を握りしめた。

どうしたら、山岸君を…。


私が一番山岸君のこと見てるのに。


そこら辺の奴らとは私はちがう。


振り向かせてみせる、、



必ず…………。




3学期になり、始めに班替えがあった。


可奈子は、山岸君と同じ班になれるよう


祈った。


『第5班は、大葉、安河内、後藤、仁科

永山、田中』


可奈子は、大きなため息をついた。


もし、同じ班なら近づけたのに……


『この班は7人なので、あと一人は山岸』


う……うそ……。


ヤッターーーー!!


神様、ありがとう!


心の中で、叫んだ。


そして、可奈子の斜め前が


山岸君になった。


前からは、後ろの人が見てることは


分からないので、授業中


可奈子は山岸君を眺めた。



ある日は、後ろの髪の毛の寝癖が

ついていて愛しく感じた。


また、ある日はあくびの時に出る声が


なんだか可愛くて……。。


そして、寝顔を見れた日は


可奈子の浮かれは止められず


何回も頭でリピートした時もあった。



スキー研修では、班行動があり


スキーの滑り方を教わって


可奈子は、わざと転けたりして


何回も助けてもらった。


こうでもしないと、距離は縮まらない。


可奈子は、精一杯アピールをした。


そして、バレンタイン。


可奈子は、決意した。


告白しようと。


可奈子は、学校が終わり裏の門で


山岸君を待った。


『小学生の頃からずっと好きでした、

付き合ってください。』


可奈子は、頭を下げ手作りチョコを


差し出した。


『ごめん』


あっさりと断られた。


覚悟はしてたけど、心のどこかで


もしかしたら…


付き合えたりしたりして。。


なーんて、正直考えたりもした。



それから、私は何回か気持ちを伝えた

けれど、叶うことはなかった。


中2の時、黒江君と同じ班になった。


黒江は、可奈子と同じ小学校だった。


可奈子と黒江君は仲良くなり


毎日メールのやり取りや


時々電話もしたりした。


ある日、可奈子は黒江に恋愛の

相談をした。


(どうしたら、山岸君の彼女になれるか)


可奈子は今までの事を全て言った。


こんなにも、気が楽になるなんて。


そして、黒江が返した言葉は



『俺、あいつの弟知ってるんだ。
あいつが、弟を大切にしてることも。』



急にその時、黒江の声が低くなった。



『な、何で弟のこと知ってるの?』



可奈子は、弟がいることは知っていた

けれど弟は見たことがなかった。


『俺の弟が同級で仲がいいんだ。
それで、山岸が弟をとても
可愛がってるらしい。
だから、それを使うんだ。
付き合いたいならそうするしかない』


可奈子は、黒江が言ってる意味が


分からなかった。


『どういう意味?』


『弟に手を出す。』


可奈子は、まだピンと来なかった。


『手を出すって…?』


可奈子は、恐る恐る聞いてみた。


『脅迫するんだ。付き合わないと
弟に手を出すと。。』


黒江は、とんでもないことを言った。


『は?へ?何言ってんの?
馬鹿じゃないの?』


可奈子は、予想外の言葉に

信じられなかった。


好きな人の弟に手を出すなんて


できない。絶対できない。


できるわけがない。


『本気で付き合いたいなら
それくらいしてみろよ。
それで、付き合えるんだぞ?
辛い想いしなくなるんだぞ?
お前、このままでいいのか? 』


黒江は、必死に言った。


『そ、それは…』


可奈子は、考えた。

そ、そして、、


実行することにした。


これで、山岸君と付き合える。



そして、可奈子は山岸君に


(付き合わないと弟に手を出す)

と、伝え怪我をさせた。


その時の可奈子の気持ちはとても


複雑で苦しかった。


私、何やってるんだろう…。


最低だ…。

でも、後悔したときには


もう、遅かった。


何度も自分をせめた。


そして、黒江君の通り


付き合うことができた。


けれど、心からは喜ぶことが


できなかった。


2人で会ったり、デートをしたり

たくさん、話したりした。


その時間は、可奈子にとって


心から幸せだと感じる時間となった。


日が経つ度に、別れを言われるのを


恐れるようになった。


けれど、瞬間が経つ度に


どんどん好きになった。


山岸君は、弟への行為のことは


一切言わなかった。


可奈子から、たくさん抱き締めた。

キスもした。


山岸君は、私の事を好きじゃないことも


我慢してくれてることも


全て分かってる。


そして、2週間がたったある日…


『ごめん、もぅ俺限界』


恐れていたことが起こった。


可奈子の目からは


大粒の涙が溢れた。


離れたくないよ…。


怖いよ…。


可奈子は、必死に山岸君に抱きついた。


可奈子は、山岸君の胸を叩きながら


『嫌だよ…。嫌だ嫌だ嫌だ』


ずっと、粘った。


けれど、山岸君の目は冷たかった。


そして、離れて行った。


その姿を見ながら、可奈子は


膝をつき大声で泣いた。


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