Voulez vous du chocolat?
別に、バレンタインを忘れていたわけではない。
高校に入った最初の年から決めていた、高3のバレンタインには、絶対に神無月君に告白しようって。
そう意気込んで……ちょうど一週間前から作り始めてた。
なのに……一向に出来ない。
何度やっても……レシピ本の通りにならないんだ。
タイムリミットは、補習が終わる時まで。
それが過ぎたら……神無月君は帰ってしまう。
そうなれば、こんなチャンス二度と訪れないわけで。
このまま卒業して、ただのクラスメイトとして一生を終える……!
「そんなの……嫌よ」
振られてもいいんだ。
それでもあたしと神無月君の中に何かが残るから。
あたしはもう何十枚目になろうか、チョコレートのパッケージを破いた。