腐れ縁が変わらぬことを
純が「泣ぐわげねぇし」と濁音まじりに言葉を返してくる。
こんな田舎になのだ。
誰でも、そう、都会人からみれば、私たちは訛っているだろう。それをかっこつけて背伸びをして、隠しているよりも大っぴらに使われていた方が安心する。
――――都会って、そんなに良いところじゃないと思う。
いつだったかそれを純に話したことがあった。彼は「だべな」と。それが「こんな田舎嫌い」という同級生の言葉を聞いたばかりだった私を少しだけ救ってくれた。
「変わらないよね」
ん?という純の頭に、紙吹雪の残骸がくっついていることに気づいた。
普通ちゃんとほろうだろうに。
「純との腐れ縁のこと!」
「変わんねーべ。中学ん時もだったし」
「うわあー……」
「なんだよ、失礼なやつだな」
ほら行けよ、と言われしぶしぶ鞄とコートを手に私は教室を出る。
春、四月からみんなそれぞれ新しい生活が始まるのか……。
新しい生活が始まる。
けれどそこには、腐れ縁の姿はない。