イケメン王子の花メイド
「だから花ちゃん、ちょっと頑張ってみようよ」
ふんわりと微笑む茜さんの背中には、今にも天使の羽が生えてきそうである。
うっとりと見惚れる間もなく、茜さんは私の手を取った。
「棗様に、好きになってもらおうよ」
「茜さん…」
棗様が、私を好きに…?
そんなこと想像出来ないほど、ありえない話です。
……でも、そうなったらなんて幸せなんでしょう…。
メイドとご主人の恋なんて、あっていいのかな。
そんなの、許されるのかな…?
「駄目だって誰かに言われちゃったら、好きだと突き通せばいいのよぉ。それでも、私は好きなんだって」
茜さんの言葉に、私の胸はとくんと柔らかく跳ねた。
私は
棗様が好きだ
綾小路様や遠山副会長がいようと。
好きなものは好きなんだ。
「……私、頑張ってみます。棗様に好きになって頂けるように、頑張ってみます!」
私がそう言うと、茜さんは満面の笑みで私に抱き付いた。
こんなにドキドキしたりワクワクするのは久しぶりだなぁ。
今度は間違わず、自分に素直になろう。
絶対、幸せになるもん。