イケメン王子の花メイド
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その夜。
私は専属メイドにも関わらず、棗様のご夕食に付き添わなかった。
というか、どんな顔して会えばいいのか分からなくなってしまったのだ。
いくら好きになってもらおうと意気込んだとしても、あの時綾小路様と棗様の行為を見た事実は変わらないのである。
すっごく顔を合わせ辛い。
……怒ってるかなぁ、棗様。
「おい!花はいないのか」
廊下を歩いていると、少し離れた所から棗様の声が聞こえてきた。
ドキッとした私は、あわあわとどこか隠れられそうな場所を探す。
パッと目に入ったのは花瓶が置かれた棚。
私は慌ててそこの横に隠れようとする。
が、しかし。
「…いたな」
「な、棗様っ…」
ガシッと私の腕を掴んだ棗様は、ギロリと私を睨んできた。
お、怒ってらっしゃる…。
「来い」
そう言い放った棗様はグイと私の腕を引いてツカツカ歩き出した。