イケメン王子の花メイド






「はーなちゃんっ」




と、そこへ茜さんがひょっこりと調理場に顔を出した。


きっとケーキの甘い香りに気付いて来たのでしょう。




「茜さん!」


「チョコケーキ作ってたのぉ?」


「はい!私も初めて作ったケーキでして、村田さんに協力していただいたんです」


「いいわねぇ~」




うふふと柔らかい笑顔を私に向けてくる茜さんを見て、私は少し安心する。



横山さんに想いを打ち明けてから数日経った今、茜さんはもういつものように自然と笑っている。


失恋ってやっぱりとても悲しいし辛いものなのだと思う。


でもこうして茜さんがすぐに元気を取り戻すことが出来ているのはきっと、横山さんの優しさのおかげなんだと私はひっそり思うのです。



横山さんの丁寧で優しい言動のおかげで、茜さんの失恋のダメージが和らげられ、スッキリとした気持ちでいられるようになっているのだと。



……きっとそれは茜さんが一番身に染みているはずです。



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