イケメン王子の花メイド
「そ、そのようなことは…」
「花」
「……」
やっぱり、私に棗様に隠し事なんで出来るわけがないのですね…。
私はきゅっと唇を噛んだ。
「……あの、もし……私がメイドを辞めるって言い出したらどうします……?」
さすがに確証もないのに有馬さんの話を棗様に話すのはいけない気がして、私は咄嗟に例え話を用いた。
恐る恐る棗様を見上げると、棗様は大きく目を見開いて私を見つめているではないか。
あ、やばい…。
「…は!?」
「あ、あのっ…、」
「理由はなんだ。まさかまた小塚森か?それとも遠山か…、」
「な、棗様!すみませんっ、例えです例え!私は辞めたりしませんからっ」
ズイズイと私に詰め寄ってくる棗様を制止するように私は慌てて両手を棗様の前に突き出す。
勢いでネクタイが棗様の顔にぺしっと当たってしまった。
「あっ、申し訳ありません!」
「……なんだ……例え話か……」
はぁと長い溜息をついた棗様は、私のご無礼すら気にもしていない様子。
こ、こんなに焦るなんて思ってなかったからびっくり…。
「花、そんな例え話二度と使うな」
「…誠に申し訳ありませんっ…」
「……なんでそんな例え話をしたんだ」
じっと私を見捉える棗様に、私はうっとたじろいだ。
こんなことなら、最初から言ってしまった方が良かったのかもしれない…。