イケメン王子の花メイド
とんでもない
* * *
「――ほう、それは良かった」
棗様はベストを脱ぎながら表情を和らげた。
夕食を済ませてお部屋に戻ったところで、私は棗様に今日あった有馬さん達のことを話したのだ。
棗様は安心したご様子。
「本当に良かったです!」
「やっぱり当人達の意思が重要だったな」
「……」
そういえば。
有馬さんが〝棗様のおかげ〟で執事を辞めない決意をしたって言ってたような。
私は棗様から脱がれたベストを受け取り、顔を覗いた。
「…棗様、有馬さんが仕事を続けられるように何か仰ったんですか?」
「え?」
「有馬さんが棗様のおかげって仰ってて……」
「ああ」
棗様はカッターシャツのボタンを2個外してベッドに腰を下ろす。
「ちょっとな」
「…やっぱり棗様は凄い方ですね…」
「は?何がだ?」
「影響力があるというか……本当に尊敬します!」
「……?」
首を傾げている棗様に私は微笑む。
……棗様は自覚がなくても、本当に棗様のその言葉や行動は影響力が凄い。
だからきっと、有馬さんも仕事を辞めなかったんだ。
すごいなぁ。