イケメン王子の花メイド
「あ、宮本さん、沢田さん」
と、そこへ廊下の角から前川さんが現れた。
前川さんは私達を見つけると、パタパタと駆け寄って来る。
…なんだろ、
なんか慌ててる?
「どうしました?」
「響子様がご帰宅されました」
「えぇ!?響子様が!?」
茜さんは口元を手で覆って驚いた声を上げた。
きょうこ…様…?
「ついさっき横山さんに連絡が入ったみたい。とにかくお迎えに行きますよ」
「は、はいぃ!」
連絡が済んだ前川さんはスタスタと玄関先へ歩き出した。
茜さんも慌てながら前川さんに続いていくので、私もそれを追い掛ける。
廊下を小走りで進んでいく途中、私はコソッと茜さんに尋ねてみた。
「茜さん、響子様って……?」
「あ、そっかぁ!花ちゃんはまだお会いしたことなかったわねぇ〜」
茜さんはそう言うと、私に笑顔を向けた。
「〝響子様〟は社長の奥様よ〜」
……え!?
しゃ、社長の奥様!?
つまり棗様の……お母様ですか!