イケメン王子の花メイド
書斎へ向かわれたのでは!?
「母さんの声が聞こえたから引き返してきた」
「あら、そんなに声大きかったかしら」
「大きいな。あと威圧的」
「まあ、この子ったら。…て、いいのよそんなことは」
響子様は長い前髪をかき上げると、腰に手を当ててふふんと笑った。
そして、顔をしかめる棗様を見つめて、響子様は誇らしげに言い放つのだ。
「喜びなさい棗。あなたに婚約者が出来たわ」
大きな声は屋敷中に響いたように感じた。
……というか、私の頭に何度もその言葉は反響されている。
………………え。
……棗様に、婚約者……?