イケメン王子の花メイド
――「遅いわよ、棗」
エントランスに下りると、来客用のソファに腰掛けていた響子様がこちらに鋭い眼差しを向ける。
「母さんが早すぎるんだよ」と小さく呟きながら棗様はソファの前で立ち止まった。
「今日は向こうが家に招待してくれてるから。早速向かうわよ」
「なあ母さん、その小道製菓とはいつ交流が出来たんだ?」
「ほら、ずっと前に食事会あったでしょう?佐木さんとこで。その時にテーブルが一緒だったの」
「……なるほどな」
「さ、行くわよ」
そしてお二人はそのまま玄関先へ向かわれる。
ツカツカと歩いていくお二人の背中を見ていると、少しだけ似た雰囲気を感じた。
……やっぱり、親子なんだ。
改めてそんなことを思う。
「ところで棗、そのメイドも連れていくの?」
と、不意に響子様は私を振り返って棗様に問いかける。
私はドキッとしてその場で固まってしまった。
「当たり前だ。俺の専属だぞ」
「あら、そうなの?
ふぅん、……あの棗が専属ねぇ」
響子様は観察するように私を見つめたあと、再び前を向いて歩き出した。
……な、なんだったんだろう。
まだ私は響子様に認めてもらえてないのかな……。