イケメン王子の花メイド
婚約者の邸宅へ向かう為、滝沢一同は玄関先に止まっていた大きなリムジンに乗り込んだ。
車内はとても広く、シートも何もかも綺麗に保たれていた。
私はなるべく車内の物に触れないよう、棗様の隣にちょこんと腰掛ける。
「棗、あなた今まで一度も彼女を作ったことがないそうね」
長いおみ足を組みながら、響子様はとんでもないことを仰った。
……そ、そうだったんですか!?
「ふん、それがどうしたんだよ。別に恥ずべきことじゃない」
「あなたそんなんだからいつまで経っても女性の気持ちが分からないのよ」
「……うるせぇな」
「そんなあなたのことを快く受け入れて下さる方よ。小道製菓のご令嬢は」
「……」
棗様は顔をしかめて少し俯く。
……あれ?
いつもならここでまた何か反論しそうなのに。
少し様子がおかしい。
「……ねぇ棗、あなたもう気付いてるんでしょう?」
響子様はじっと俯く棗様を見つめる。
棗様は大きく溜息を漏らして、静かに頷いてみせた。
え?
な、なんのこと?
「ね?棗も好きでしょ、ああいう子」
「そういうのじゃない。俺の好みを勝手に決めるな」
棗様と響子様のやりとりを見て、私は首を傾げる。