イケメン王子の花メイド
――その後、広い座敷へ通された滝沢一同は改めて綾小路家と挨拶や談笑を交わした。
気品溢れる綾小路家は、まさに和が似合っていて。
綾小路様を見ていると「大和撫子」という言葉が自然と浮かぶ。
「そろそろ棗、久美子さんと2人で話してきたらどう?」
そこで響子様は棗様に顔を向けてそう話した。
棗様は「え」と小さく言葉を漏らす。
「そうねぇ、それがいいわねぇ」
「そうだな。行ってきなさい、久美子」
響子様のご意見に賛同された綾小路様のご両親も笑顔で頷いている。
そして棗様と綾小路様は1度顔を合わせて、ご両親の方へ再び向き直った。
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「失礼します」
静かに立ち上がったお2人。
出入口となる襖のそばに座っていた私は慌てて邪魔にならないように下がる。
顔を上げると、ばっちり棗様と目が合ってしまった。
「花も来い」
「……えっ」
思わず声が漏れて、私はハッと口を押さえる。
わ、私もですか……?
でもお2人の時間なのに……邪魔になるのでは……。
「ここにいても緊張するだけだろ。ほら行くぞ」
「あっ……は、はいっ」
棗様の言われるがままに、私は慌てて立ち上がった。
こんな時でも私に気遣いをして下さる棗様……。
綾小路様の視線が少し気になりますが……私は棗様のご命令には背くことができません。