イケメン王子の花メイド
広いのに隅々まで手入れされているお庭をゆっくり歩きながら、棗様と綾小路様は言葉を交わす。
「ねぇ棗くん、びっくりした?」
「……まぁ、そうですね」
「ごめんね、黙ってて。サプライズにしたくって」
少し後ろを歩いてお2人の様子を眺めていると、なんだか心が落ち着かなかった。
……目の前を歩く美しいお2人は、もう婚約した仲なんだよね。
なんか、現実離れしてて……遠い世界のお話のように感じる。
誰が見てもお似合いなお2人。
きっと、皆が憧れる素敵な夫婦になるんだろうな。
「……一つ、聞いてもいいですか?」
「うん、いいよ」
棗様は立ち止まって綾小路様に向き直った。
それに合わせて私も離れた所で立ち止まる。
「綾小路さんは、本当に俺と婚約するつもりですか?」
真剣な眼差しを綾小路様に向ける棗様。
私は思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。
「……うん、もちろん。だって私、棗くんのこと本当に好きなんだもの」
優しい声で話す綾小路様の言葉が耳に残る。
……本当に好き……なんですね。
気付いてはいましたが、改めて聞くと……なんというか……心が苦しくなります。