イケメン王子の花メイド

「そうですか」


「棗くんが私のこと好きじゃないのは分かってる。でも、これから先どうなるかは分からないでしょ？」


「……」


「大丈夫よ棗くん。響子さんも喜んで下さってるし」


「……まあ今更あの人の気が変わるなんてことはないでしょうね」





棗様が溜息を漏らすと、綾小路様は可愛らしく微笑んで。

くるりと後ろにいた私の方へ体を向けた。





「花ちゃんも私達のこと応援してくれるよね？」





……え。

応援……。



にこりと微笑む綾小路様に、私は思わず口を噤んだ。



……それは、もちろんです。

棗様のメイドである私は、棗様の幸せを1番に願っているんですから。


こんな素敵な綾小路様と結ばれるなんて、素晴らしいことですもの。





「……はいっ。もちろんです！」


「うふふ、ありがとう花ちゃん」





〝棗様を好きな私〟が……すごく邪魔だ。

こんな私……いなければいいのに。


そうしたらこんなに苦しまず、心から棗様と綾小路様をのことを応援できる。



……なんで私、棗様のことを好きになっちゃったんだろう。





「……」





ふと、じっとこちらを見つめる棗様の視線に気が付いた。


この気持ちがバレてしまいそうで、私は慌てて棗様から顔を背ける。



……消さなきゃ。

棗様に対するこの気持ちを消さなきゃ……私、耐えられる気がしない。




茜さんごめんなさい……。


私はやっぱり、この恋を諦めたいです。