イケメン王子の花メイド
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「えー!そんなことになってたの?」
ティーカップを持ったまま、馨様は驚きの言葉を漏らす。
デスクに肘をついて本のページをめくる棗様に視線を向けて、馨様は少し戸惑いの表情を見せた。
「……まさか棗と綾小路さんがねぇ」
「俺も驚いた」
「でもすごいね、綾小路さんと婚約するなんて。皆絶対羨ましがるよ」
「……そういうものか?」
「えー、そうだよ。綾小路さんすごくモテるよ」
……そりゃそうですよね、あんな可愛い人がモテないわけがない。
でも棗様って本当にそういうことに関して疎いですよね……。
「まあ棗と綾小路さんならお似合いかなぁ」
「……」
「なんかちょっと寂しくなるね、花ちゃん」
不意にくるりと振り返られた馨様に、私は思わずビクッと驚いてしまう。
……寂しい……。
確かに、寂しいです……。
でも、私は棗様の専属メイドです。
ここで私が『寂しい』と言ってしまうのは、きっと間違ってる。
「……いえ、すごく喜ばしいことだと思いますっ」
「えー花ちゃんなら共感してくれると思ったのに~」
「棗様の幸せは、私の幸せですので!」
「……良い子だなぁ、花ちゃんは」
感動したように目頭を押さえる馨様を見て私は微笑んだ。