イケメン王子の花メイド
ちらりと棗様に目を向けると、ばっちりと目が合ってしまった。
なんでも見透かされてしまいそうなその眼差しに、私の顔はひきつる。
「……花」
「は、はいっ」
「今日のケーキも美味い」
「……へ?あ、ありがとうございます!」
……びっくりした。
てっきり、また私が隠し事をしてることに気付かれたのかと。
それにしても、なんだか今日の棗様……ずっと考え事をされてますね。
口数も少ないですし、目もあまり合わない。
やっぱり、婚約が決まったことで色々考えることがあるんでしょうか。
準備はこちらで全て進めてはおりますが……。
「棗は綾小路さんのことどう思ってるの?」
「……は?」
馨様の質問にドキリと心臓が鳴る。
私も心のどこかで気になっていた。
棗様のお気持ち。
聞きたいような、聞きたくないような……。
「……まあ、良い人だとは思う」
遠くを見つめながら話した棗様。
そんな姿すらも絵になるような美しさだった。
……良い人、ですか。
〝好き〟って言葉が出なくて、少しほっとしてる自分がいる。
……駄目なのに。
なんでこんなに自分の感情って上手く操れないんだろう。