イケメン王子の花メイド
「確かに良い人だけどね。優しいし気が利く」
「そうだな」
「これ学校に広まったらすごい騒ぎになりそうだね」
「……まだ言うなよ。騒ぎは面倒だ」
そっか、そうだよね。
生徒会長である棗様と、人気者の綾小路様が婚約したなんて……大ニュースだもん。
遠山副会長もきっとご存知ないですよね……。
小塚森様も。
「どのタイミングで言うの?」
「いつかは分からん。というか発表なんて大それたことしない」
「えぇー、会見とか開くのかと」
「馬鹿か」
あははと笑う馨様に対し、棗様も少しだけ硬い表情を崩した。
会見……。
すごくしてそうだ……。
ああいうのって政治家や芸能人がするイメージだけど、棗様くらいになると全然違和感ない。
「まあ俺にも考えるところはある。もう少し時間をくれ」
「分かった。棗が言うなら」
馨様はそう言って優しく微笑んだ。
なんだか2人だけの世界を感じて、私は何も言えなかった。
そもそも何も言えないけど……。
考えるところ……か。
何を考えてらっしゃるのか気になるけど、やっぱり知りたくないような気もする。
結局棗様と綾小路様が婚約された事実は変わらないんだし。
……それよりも私は、棗様を諦める努力をしなくては。