イケメン王子の花メイド




ある日、ベンチに座って公園をぼーっと眺めていたらその親子のお母さんが隣に座ってきたんだ。

娘さんは向かいにある遊具で遊んでて。


お母さんは私にこう声を掛けてきた。


『こんにちは。この公園によく来られてますよね?』


優しい雰囲気に私は心が落ち着くのを感じたよ。

彼女も私の存在に気付いていたってことも少し嬉しかった。


それから、そのお母さんとは公園で会うとたまに話すようになったんだ。

娘さんとは挨拶程度しか話せなかったけどね。
お母さん曰く、人見知りしてたみたい。



素敵な親子だと思ったよ。

なんだか少し、懐かしくも羨ましくもあった。


私にも同じくらいの息子がいると伝えたら、『また連れて来て下さいな』って嬉しそうに言ってくれたり。

すごく温かい時間だった。



……そして私も仕事が忙しくなって、あまり公園に来れなくなってきた頃かな。

娘さんは高校生になっていて、向こうも公園に来る頻度は昔ほど多くはなくなっていたらしい。



ある日たまたま公園に来た時、1人で来ていたお母さんに会ったんだ。

2人で来れない日は1人でも来ていたらしいね。買い物の帰りとか。


その日も2人でベンチに座って少しお話したよ。


『息子さんはお元気ですか?』

『はい。娘さんも確か高校生になったんですよね?』

『ええ、散歩になかなか行けなくて寂しがってました』

『ほっほ、今度こそちゃんとお話しできればいいんですけどね』

『そうですね。あの子が大きくなってからは散歩の時間が合わなくなりましたものね』

『その時は私の息子も連れて来ますよ。きっと仲良くなれると思うんです』

『わぁ、楽しみですね。仲良くなれれば良いですねぇ』



……結局、それが叶うことはなかったけどね。



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