イケメン王子の花メイド
後ろ手に扉を閉じて、私は小さく溜息を漏らす。
……棗様と、婚約の話を一切してないのが怖い。
棗様からも何も言われないし、もちろん私から話を振ることもない。
だから、棗様が今どうお考えになられてるのかが分からない。
ここ最近ずっと考え事されてるようですが……。
何を考えらっしゃるんだろう。
……でも、それを聞くのも怖い。
きっと私にとって辛い話になるんだろうし。
「……はぁ」
全然棗様のこと諦められない。
駄目だ私。
あれもこれも何も出来てない。
社長はああ言って下さったけど、さすがにこればかりは素直になんてなれませんし……。
「沢田」
ふと、そこで有馬さんの声が聞こえた。
振り返ると、掃除を終えた様子の有馬さんがこちらに向かって歩いて来ていた。
「何してるんだそんなところで」
「すみません……ぼーっとしてて」
私は慌てて頭を下げる。
そして仕事も疎かになって怒られちゃうっていう……。
私、ほんとに駄目駄目過ぎる。