イケメン王子の花メイド



「きっと、困らせてしまうんだと思います……」


「だから言いたくないか?」


「……棗様の専属メイドですし、棗様を困らせるようなことしちゃ駄目ですから」




有馬さんはじっと私を見つめている。

なんだかそれが気まずくて、思わず俯いた。


……なんだか私、言い訳してるみたい。



だってもし告白して、棗様を困らせちゃって、

専属を外されるようなことになったら……。


私、棗様に尽くして生きるって決めたのに……それも出来なくなってしまう。


棗様のおそばから離れることが、一番辛い。




「伝えないと何も変わらないぞ」


「……か、変わらなくていいんです。私は棗様の専属メイドでいられればそれで十分幸せです」


「それを聞いたらまた宮本が怒るな」


「……あ」




有馬さんは思い出したように少し吹き出した。

私も、泣きながら怒る茜さんを思い出す。


……真っ直ぐで明るい茜さんが羨ましい。

でもそんな茜さんも……実らないと分かってて告白をしていた。


告白をした後の茜さんの涙は見ててすごく辛かったけど、

どこかすっきりとしたような表情をしていたような気がする。



< 270 / 314 >

この作品をシェア

pagetop