イケメン王子の花メイド





――そして棗様は支度を済ませると、本当に響子様と綾小路家へ出掛けられた。

しかも、付き人不在の2人っきりで。



お見送りを終えた使用人一同は、少しの間ざわついていた。




「突然どうしたのかしらぁ」




隣に立つ茜さんは顎に指を当てて首を傾げている。


この様子だと、何をしに綾小路家へ向かわれたのかはここにいる誰も知らないようだ。




「前は花ちゃん連れて行ってたのにねぇ」


「……」


「花ちゃんも聞いてないの?」


「はい……」




きっかけは、今朝の会話だと思う。


……でも、あの流れでどうして綾小路家へ?

しかも誰も使用人を連れて行かないなんて。


棗様のすっきりした表情がすごく引っ掛かる。




「……私、お菓子作って待ってます」


「え、花ちゃん?」




きょとんとする茜さんにぺこっと会釈をして私は調理場へ向かいだした。



考えてても埒が明かない。

お菓子作りして心を落ち着かせよう。


……棗様は召し上がって下さるだろうか。



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