イケメン王子の花メイド
「……ねむ」
「棗様、早くご準備なさらないと学校に遅れますっ」
私はそう言って再びベッドに潜り込もうとする棗様を阻止した。
朝が弱いっていうこと自体、なんか愛おしく感じる。
いつもスマートで凛々しい棗様が、朝はこんなに弱いという。
……言ったら怒られそうだけど、すごく可愛いです。
「学校の支度は全て済ませておりますので、あとは身支度だけですよ」
「……分かったよ」
ようやくベッドから立ち上がった棗様は、完全に開かれていない目のまま着替えだした。
私は棗様に制服を渡してから後ろを向いた。
……そうだ。
ずっと気になってたことがあったんだ。
「あ……あの、棗様」
「ん?」
「……綾小路様は、なんて仰ってましたか?」
後ろで着替えている棗様の動きが一瞬止まったように感じた。
〝だって私、棗くんのこと本当に好きなんだもの〟
綾小路様は本当に棗様のことが好きだった。
だから棗様との婚約を……。
でも、棗様は響子様と一緒に断ったって聞いて……
綾小路様は一体どうしたのかずっと気になっていた。