イケメン王子の花メイド
「ここは落ち着きますね」
「親父が使ってた書斎を譲ってもらったんだ。親父は今別の書斎を使ってる」
「そうだったんですか!」
自分の書斎があるなんてこと、私にとって嬉しいのかそうじゃないのか考えても分からないけれど。
棗様はとても嬉しそうにしているから、それでいい気がした。
「花は何か好きなことはないのか?」
「へっ?」
す、好きなこと?
突然聞かれた私は戸惑う。
好きなこと…かぁ……そうだなー。
「お散歩、とか」
「…散歩か」
あれ、興味湧かなかったかな…。
まあ散歩なんて確かに「ふーん」「あ、そう」で終わる地味な趣味なんだけど。
「じゃあ今度一緒に散歩するか」
私はパッと棗様を見上げた。
後ろの窓から太陽の光が射し込んで、キラキラと棗様が照らされる。
絶妙な後光となり、天使のように見えた。
「…は、はい!」
ドキドキと高鳴る胸を押さえつつ、私は大きく返事をした。