イケメン王子の花メイド
——「それじゃあこの2冊、借りていくね」
「本もいいが勉強もしとけよ」
「分かってるってー」
ニコニコしながら手に持った2冊の小説を振る。
どんな本なんだろう。
「今日は楽しかった。また花ちゃんのお菓子食べに来るね」
「ありがとうございますっ」
机から腰を離し、ニッコリ私に笑顔を向ける馨様はやっぱり王子の雰囲気溢れるお方だ。
そして棗様に向き直る。
「じゃあね。これ読んだら感想聞いてね」
「分かった」
そうしてフリフリと笑顔で私達に手を振りながら書斎を後にしていった馨様。
しんと静まり返る書斎には、本の独特の匂いとクッキーの甘い香りがいい具合に入り混じっていた。
「…馨があそこまで懇願してきたのは中々ないな」
「…へ?」
「お前はもう俺の専属メイドだ。他にはいくなよ」
まっすぐな曇りなきその眼差しに、私は圧倒されながらもコクコクと頷いた。
…こんな素直な好意は照れる。