イケメン王子の花メイド
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「…あらぁ?」
その声に振り向くと、茜さんがキッチンに顔を覗かせていた。
「甘い美味しそうな香りがすると思ったら花ちゃんだったのねぇ」
「はい。棗様に差し上げるのです!」
今回はココアのシフォンケーキ。
作ったことはないけど、案外簡単そうだったからこれにした。
「あらぁ、もうそんな仲にまで」
「えっ」
茜さんはにまにまと楽しそうに笑って私の隣に立つ。
そ、そんなんじゃないですもんっ。
「棗様お一人で食べるには多すぎない?」
「ですよね…。まあ余れば自分で食べます」
「あらっ、それなら私も食べたーい!」
元々食べたかったのか、嬉しそうに手を上げる茜さんを見て、私はクスリと笑った。
「…私お菓子作りはてんで駄目なのよぉ」
「そうなんですか?」
少し残念そうに眉尻を垂れさせる茜さん。
意外である。