イケメン王子の花メイド
「何、メイド?随分若いのね」
そう言うと、ツカツカとそのお方は私に近寄ってくるではないか。
私は逃げるわけにはいかず、いやほんとは逃げたくて仕方がないんだけど、踏ん張って彼女を見上げた。
「……それは?」
私の手元に視線を落とすと、彼女はシフォンケーキを指差した。
「し、シフォンケーキでございます」
「ケーキ…」
「あ、あの!お茶をご用意しますので、お掛けになってて下さい!」
私はそう言って、テーブルにシフォンケーキを置いた。
それから踵を返してキッチンへ紅茶を入れに歩き出す。
と、
「待て」
すれ違い際に棗様に腕を掴まれた私は、かくんとバランスを崩して止まる。
慌てて振り返って棗様を見上げると、いつもの無表情で私を見つめていた。
「お茶は入れなくていい。遠山副会長にはここでお引き取り願う」
「え…」
「なっ、滝沢君!?」
驚いた彼女の焦る声が聞こえる。