イケメン王子の花メイド
「な、つ…」
「何その顔」
「……っ」
棗様に見つめられ、私は視線を下へ逃がした。
なんで笑えないのか、なんでこんな顔が引きつるのか分からない。
お似合いなんて、後悔した。
「…おい」
「あ、あのっ…なんだか体調が悪いみたいなんですよねぇ〜っ」
「…花」
だ、駄目だ。
嘘が全く通じない。
私は早くこの場から逃げることが出来ればと必死に言い訳を考える。
がしかし、その努力は棗様の一言によって簡単に打ち砕かれる。
「馨悪い。少し花と二人にさせてくれ」
「っ!?」
「はーい。じゃあ仲良くね」
そう笑顔で言い残した馨様は、あっさりと書斎から出て行ってしまわれた。
既に私の頭はパニックで何も考えられていない。
ただ棗様に掴まれた腕からじわじわと熱が体中に伝わってくるのを感じるだけだった。
「……な、棗様、あの…」
「何」
「……私もあまり遠山副会長のことが好きではないのかもしれません」
「…ほう」
果たしてそれが私の今の晴れない気持ちの原因なのかと聞かれれば、100%正解だとは言えないけれど。
ただ、間違いではない。
私は多分遠山副会長が苦手だ。