イケメン王子の花メイド
「(照れてるなー)…どうかした?」
「い、いえ…なんでも…」
「こういうの、慣れてない?」
そう顔を近付けてきた小塚森様は、また巧みに指を動かせて、最終的に恋人繋ぎというものに完成させてしまった。
慣れてないとかそういう域じゃない気がします……っ!
「(手繋ぐだけでそんなに?)もしかして、彼氏とかいたことないの?」
「いえ……一人いました」
「そうなの?なのにこんなに照れて…可愛いねー」
それ以上私をいじめてどうしようというのですか!?
なんて言葉は出ないし出せないのだけれど。
私はただただ顔を真っ赤にさせて俯くのであります。
「こら、小塚森」
「いてっ」
ビシッと小塚森様の頭に軽いチョップを食らわせたのは、王子のような馨様だった。
馨様は少しムッとした顔をして小塚森様を見下ろす。
「あんまり花ちゃんいじめない」
「えーだってほんとに可愛いし」
「それでもあそこにいる花ちゃんのご主人様は至極顔を歪ませていますよ?」
馨様はそう言って視線を皆のいる方へ向けた。
私と小塚森様もそれに続いて目を移す。
目に飛び込んできたのは、これでもかというほどこちらを睨む棗様だった。
……こ、これは…。
「ちぇー」
残念そうにそう口を尖らせた小塚森様はゆっくりと席を立ち上がる。
その小塚森様の肩に腕を回した馨様はそのまま小塚森様を連行して行く。
「またねー花ちゃん」
くるっと顔だけ振り向かせた小塚森様はへらりと笑って私に手を振る。
私もそれにぺこりとお辞儀をすると、二人はのそのそとあちらへ遠ざかって行った。
…あードキドキした…。