イケメン王子の花メイド
「正直、社長が私を雇って下さった時も、本当に嬉しいかどうかよく分からなかったんです」
ただどこかに逃げられれば。
自分がこれ以上、辛い思いをしなくて済むならなんでも良かった。
嫌いな叔母さんとも会わなくて済むなら。
「……でも、今は社長に拾って頂いて、本当に良かったと思います。
それがあって、棗様や茜さん、有馬さんや馨様とも出会えましたし…」
こんなに幸せな気持ちになれているのも、社長や皆様のおかげだ。
「感謝の気持ちがいっぱいなんです」
「…そうか」
ポンポンと優しく私の頭を撫でて下さる棗様の手は、とっても温かかった。
すごく、すごく泣きそうになるほど嬉しい。
「…じゃあ、お前がたまに心から笑ってないのはなんでだ?」
「え…」
そ、そんなことまでバレてたのかぁ……。
なんて鋭いお方なんだろう。