数学的彼女×哲学的彼氏
十幻くんの薄くて紅い唇を舐める。
十幻くんが、私の舌を噛んだ。
離れようとした時には、彼の腕の中。
「林檎をたべた、彼の心情はどんなだったのかな。そして、たべられた彼女も」
がり、とまた舌を噛まれた。
容赦無い。失敗した。
「…んん」
今度はしっかり彼を押したつもりなのに、ぴくりとも動かない。
彼の切れ長な目が、私を捉えて離さない。
「…いひゃい」
そう言うと、満足そうに彼は舌を解放する。
「…ねぇるめいくん、ほんとうは僕のことが好きでたまらないんだろう?」
得意気な十幻くんの言葉に言い返せない。
「この感情は私の方程式じゃあ解けない」
満足そうに笑う。
「こんな行為は生物学上必要ないのだけど、何故か僕は君を求めているようだ」
知ってるよ、そんなこと。
はじめて会った時から、珍しい私に夢中だったんでしょう?
十幻くんは私の舌を舐める。
私は優しいから、彼の舌を噛んでやり返す、なんて事はしない。
「こんな行為は生物学上必要ないのだけど、僕らには必要のようだ」
「そうね。私の計算上にもないし、この感情をxに置き換える事はできないもの」
彼の首に 巻き付いた私、あぁ満足。
いいえ、計算上にないと言うのは嘘。
出会った時から、彼を私のものにする方程式は、組まれていたもの。
「ふふ、計算通りよ」
私は彼にキスをする。