君の命の果てるまで
その日も、同じ夢を見た。

だけどその日は、夢の結末が違った。



代わる代わる見上げているうちに、両親の顔が影のように薄れていった。

私は、怖くなって。

両手を、さらに強くぎゅっと握りしめるのだけれど―――


その手は、砂のように崩れ落ちて。


最後はただ、自分の両手を握りしめて、私は一人、荒野に立っているのだ。

たった、一人で―――



目が覚めても、喉元までせり上がってきた悲鳴と悲しみは、形にならないままずっとそこに留まっていた。

苦しくて、息をするのもつらい。

朝が来るのを、心の底から願った。



そして、永遠のように長い夜が更けて。

やっと朝になった。



看護師の歩き回る音。

ストレッチャーが押される音。

人の、話し声。

目覚まし時計の音。



ひとつひとつ、音が世界に戻ってくる。



そして、私の部屋のドアも、軽くノックされた。




「奈緒さん、おはよう。」



返事をしようとしたのに、喉が張り付いて、声が出なかった。



「腕を貸して。」



朝田が脈を取ろうと、私の手首に触れた瞬間。

何の前触れもなく、涙が零れ落ちた。



「どうした?どこか具合が悪い?」



尋ねられて、首を振る。

首を振りながらも、溢れる涙を止めることができなかった。


先生の手が、温かいから。

そっと触れる手の感触が、優しくて、恋しくてたまらなくて―――



「悪かった。どうしたって聞く方が間違ってる。眠れなかったんだよね。嫌な夢でも見たか?」



朝田の言葉に、涙はさらに溢れる。



「答えなくていい。」



そう言って、朝田は手を離した。

その代わりに、温かいその手で、私の頭をぽんぽんと叩いた。



「やっと泣けたね。」



朝田は知ってるんだ。

私が、泣くことさえできずに苦しんでいたことを。


ただそれだけなのに、私の心は軽くなったような気がして。

やっとやっと、朝田に頷いて見せた。
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