ナナイロのキセキ
恋の予感。

「ありがとうございました。」


深々と頭を下げ、本日5人目のお客様を、店の外までお見送りする。

心のなかで10数えると、ゆっくりと頭をあげ、姿勢を正す。


(さて、今日はこれで終わりだなっ!)


お客様が角を曲がり、見えなくなったことを確認すると、ふーっと大きく深呼吸をして、職場である店の中へと戻っていく。

牧野菜々子21歳、アロママッサージ店でセラピストとして働きはじめて早7か月。

なんとか一通りの仕事を覚え、リピーターさんも増えてきた今日この頃。

就職活動がうまくいかずに悩んでいた大学時代、セミナーで、セラピストという職業の話を聞いた。


アロマテラピーやリフレクソロジー、マッサージなどを仕事にする人たち。


大学は文学部だったし、それはまったく知らない世界だった。

アロマテラピーには元々少し興味があったし、仕事にできるかもという期待をこめて、大学と並行して、アロマテラピースクールに通学をはじめた。

< 1 / 261 >

この作品をシェア

pagetop