ナナイロのキセキ
「坂下さん、今日予約入ってないよね?」
私の手元に視線を移し、にまーっとした笑顔のまま、私に問いかける。
「えっと・・・!いや、これは・・・!」
(あああ、どうしよう!!言い訳すら思い浮かばない!!)
真っ赤になっている私の肩をポンポンと叩くと、「うふふ」と意味ありげに笑う。
「昨日、見ちゃったよー。坂下さんに声かけられてたでしょ。」
「えっ!!み、見てたんですか!?」
「見てたっていうか・・・、この、レジのところから丸見えなんだもん。」
外を指さす方向に目を向けると、確かに、昨日私たちがいたであろう場所がよく見える。
オフィス街で、あちこちのビルから光は注ぎ、夜でもあまり暗くはならない。
(うう、確かにばっちり見えそう・・・。)
「いいじゃん!坂下さん、インテリっぽくてかっこいいよね、背も高いし!」
私の恥ずかしさは全く気にも止めていない様子で、有馬さんはにやにやと話す。