ナナイロのキセキ
恋のはじまり。
水曜日。
時計の針は17:50。
約束の時間まであと10分もあるけれど、私はすでに、待ち合わせ場所である、駅ビルのインフォメーション前にいた。
(早すぎたかな。)
あの日以来、なんだか浮かれたような、落ち着かない日々を過ごしていた。
約5年ぶりの、男のひととのデート。
(デート・・・でいいのかな、有馬さんはそう言ってたし。)
それまでは、ただの「ちょっとステキな人」だったのに、あれ以来、なんとなく意識してしまって、知らないうちに、私の中での坂下さんの存在が大きくなってしまった。
今日の約束を交わしたあとは、連絡も一度もしていない。
本当に会うんだよね?とか、なにか用事でもないのかな?とか、坂下さんからのメールを期待している自分がいた。
完全に、一方的に、舞い上がっているような気がする。
(妄想が加速しているのは、有馬さんじゃなくて私かも・・・。)