ナナイロのキセキ
「花嫁修業でも始めるの?」

「ち、違うよ・・・!」

最近敏感になっている関連ワードに、私は即座に反応する。

でも、それを悟られないように、平静を装って否定した。

「・・・ただ、遊びに行ったときに作れたらいいなって。

それだけだよ。」

「そうなの?てっきり結婚の話でも出てるのかと思っちゃったわ。」

「ま、まさかっ!」

そう。そうなのだ。

私が勝手に妄想を抱き、勝手にひとりで悩んでいただけで、亮一さんからは、結婚の「け」の字も出ていない。

毎日電話もしているけれど、お互いに今日の出来事を報告しあうだけで、次に会う約束すらしていない。

「ふーん・・・。

でも、坂下さんもいい歳だし、遠距離だしねえ。

そろそろかな、なんて、お母さん思ってるんだけど。」

「か、勝手に決めないでよ・・・!

人それぞれでしょ、そういうのは。」


(勝手に考えてたのは、ほかでもない、私なんだけど・・・。)








< 214 / 261 >

この作品をシェア

pagetop