ナナイロのキセキ
どうしたらいいのか、何を望んでいるのかさえ、わからなくなってきてしまった。

亮一さんの、困ったような、苛立っているような、それでもなんとかそれを抑えているのがわかる、低い声。

こんな声を聞いたのは、初めてかもしれない。

スマホを持つ手がわずかに震え、胸の痛みが増していく。

お互いに、相手のことを思っていて。

だからこそ相手の思いに応えたくて。

そう思っているはずなのに、私は・・・その思いを素直に受け入れることが出来なくて。

必死に自分なりの思いを伝えようとするけれど、それは微妙にすれ違い、互いのジレンマを増やしていく。


(ケンカしたいわけじゃないのに・・・。)


呼吸が苦しい。

気をゆるめれば涙が出てしまいそうで、私は必死にそれをこらえる。

「・・・本当に、無理してるわけじゃないんだけど・・・。

ごめん。また、今度話そうか。」

「・・・はい・・・。」

亮一さんが「おやすみ」と言って電話を切る。

大好きな言葉なのに、今日聞く声は、寂しくて切なくて。

想いを込めるように目を閉じると、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。





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