ナナイロのキセキ
メニューから、私はグラタン、店長はドリアのランチセットを注文する。

「たまにね、息抜きしたいときに、こっそり来るの。」

店長は、「えへへ」と言った感じで、二人しかいないのに私にこそっと打ち明ける。

「こっそりですか。」

私はふふっと笑う。

「うん。こっそり。

だって、みんな、仕事の合間にパンとかおにぎりパパッと食べてるでしょう。

一人でこんなとこでゆっくりしてるとか、申し訳なくて。内緒ね。」

「ほんとにたまにだけど。店長の特権」、といたずらっぽく言ってから、先に届いていたアイスティーを静かに吸い込む。

ふうっと息を整えると、店長は私を窺うように口を開いた。

「彼氏とはうまくいってるの?」

「・・・!と、突然ですね・・・。」

うっかり、飲んでいたアイスコーヒーでむせそうになった。

ゴクン、と音を立てて飲み込んでから、私は呼吸を整える。

「うまく・・・いってると思いますけど・・・。」

なんとなく気まずくて、とは言えず、私は濁した言葉で返事する。

「なんか歯切れ悪いなあ。いってるの?いってないの?」

いまの返事に不満があるようで、店長は、私にはっきりと答えるように求めてくる。


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