ナナイロのキセキ
(うう。店長にはかなわない・・・。)


「仲はいいと思うんですけど・・・。

最近、ケンカまではいかないけど、気まずくなる事件があって。」

どう言おうかと悩んでから、自分なりに、正直な状況を説明する。

「どんな?」

「どんなって・・・。」

彼氏とのいざこざなんて、お酒でも入らないと言いにくい私だけれど。

店長の目はなぜか真剣で、単なる興味本位ではなさそうだった。


(話した方が、いいのかな・・・。)


アイスコーヒーに浮かぶ氷を、ストローでくるりとまわす。

「はい」と意味のない返事をしてから、私は気持ちを整える。

「遠距離で・・・なかなか会えないわけですけど・・・。

やっぱりもっと会いたくて、もっと会いたいって言っちゃったんです。

そうしたら、彼は「明日会いに行く」って言い出して。

うれしいんですけど、なんか申し訳なくて・・・。

彼は、とにかくやさしくて、私に甘いんです。

だから、私のためなら、無理してなんでもしてくれる気がして・・・。」

こんなことを言ったら、単なるノロケだと思われるかもしれない。

言ってから、そんな考えが頭に浮かび、恥ずかしくて顔を下に向けた。
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