ナナイロのキセキ

お礼を言おうと体の向きを変えたとき、何かにつまずいてバランスを崩してしまった。

「きゃっ・・・。」

その瞬間、私の身体を坂下さんが抱きとめる。


(・・・!!)


「大丈夫?」

「は、はいっ・・・。」

耳元で聞こえる声。

心臓が、一瞬、鼓動を止める。

次の瞬間、いままで感じたことのない、ものすごいスピードで心臓が動き出した。

「もしかして、お酒弱かった?顔、赤いし。」

「いえ、そんなことは、ないんですけど・・・。」

顔を覗き込まれ、心臓が壊れそうに拍動を続ける。

大きな腕に支えられている肩が熱い。


(顔が赤いのは、多分、お酒のせいじゃないよ。)


「そっか・・・って、あ!ごめんっ!」

ふいに、私の肩を抱きとめたままであることに気づくと、坂下さんはその手をパッと放す。

それでも、その感触は残ったまま。

「い、いえ・・・。」

沈黙が、果てしなく続くように流れる。


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